中居に国分、田原俊彦。ジャニーズ系への容赦ない狙い撃ちが示す「死人に口なし」どころか、生きた人間すら問答無用で葬る時代【宝泉薫】「令和の怪談」(5) |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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中居に国分、田原俊彦。ジャニーズ系への容赦ない狙い撃ちが示す「死人に口なし」どころか、生きた人間すら問答無用で葬る時代【宝泉薫】「令和の怪談」(5)

「令和の怪談」ジャニーズと中居正広たちに行われた私刑はもはや他人事ではない(5)【宝泉薫】

中居正広

  

◾️ジャニーズ騒動は、敗者による歴史の改竄作業

 

 ところで、この記事に寄せられた感想のなかで、何よりうれしかったのは、川端康成の例を引き合いに出したところへのものだ。

「個人的な印象としても、ジャニーの性癖はもうちょっとプラトニックなもので、その傾向は加齢とともに強まっていったのではという気がする。たとえば、ジャニーが元気で可愛い少年を好んだように、薄倖で可憐な少女を愛した川端康成もそうだった。ウラジミール・ナボコフの『ロリータ』が話題になった際、川端は『あれは汚いから嫌だ』と感想を語ったが、それに似た感覚をジャニーも持っていたのではないか」

 この指摘について「ここがいちばん腑に落ちた」というようなことを言ってくれた人がいて、ジャニーも浮かばれる気がしたものだ。

 

 とはいえ、彼はもう故人であり、今さら何を言われても彼自身が傷つくことはない。問題は現役タレントや事務所の運営を引き継いだスタッフがこうむった、そしてこうむり続けている損害だ。いや、その損害は中居正広や田原俊彦といったOB、あるいは国分太一のような事務所直系ではなくなった人にも及んでいる。事務所が実態以上のマイナスイメージを背負ったことで、その界隈の人ならいくらでも叩けるという空気ができあがってしまった。

 そのあたりについては、まだまだ声を上げていきたいと思うし、その理由として、前出の記事でも紹介した歴史家・磯田道史の発言を再び引用しておく。彼は歴史を考える場合「勝者、敗者、滅亡者」の三つの視点があるとして「歴史は勝者が作る」というのは必ずしも正確ではないと指摘した。

 

「たしかに、最初は勝者が作って威張るんですよ。そのあと、敗者は必死で勝者が作った歴史を改竄して自分たちの正当化を始める。敗れても生き残っていれば、歴史改竄をもう一回始めるんですよ。いちばん困るのは滅亡者。滅亡者は歴史を語る口がない。死人に口なしにされるんです。滅亡者の歴史を見るときは、我々はよぉく気をつけて見ないといけないっていうことなんですね」(「英雄たちの選択」NHKBS)

 ジャニーズ騒動は、敗者による歴史の改竄作業でもある。ジャニーやメリーはすでに「死人に口なし」だ。このままジャニーズが滅亡者になってしまうと、事実上の「冤罪」が正当化されかねない。

 いや、中居正広や国分太一にいたっては、本人が生きているにもかかわらず、反論が許されないような不思議な強制力が働いている。これが異常事態であることに、気づく人がもっといてもよいのではないか。

 しかも、ここ数年、一度貶められたイメージを回復するのは難しくなってきた。芸能界、いや、世の中全体に、それを難しくする空気が醸成されてしまっているからだ。そこにはマスコミやSNSでのバッシングを面白がり、気軽に参加しようとする大衆の悪ノリみたいなものも関係している。

 思うに、その悪ノリは2016年の「ゲス不倫」騒動あたりから顕著化してきた。第6回では、そこを見ていくとしよう。

  

文:宝泉薫(作家、芸能評論家)

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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